ふらり瀬戸内ひとり旅 –豊島編–
犬島港からフェリーに揺られること25分。
ボクは緊張していました。
なぜなら、豊島がスケジュール的に、最もタイトだからです。
そしてもっと最悪なことに、致命的なミスに気づいてしまったからです。
豊島の所要時間、2時間25分だと勘違いしてました。
1時間25分でした。
絶望しました。絶対行きたいと思ってたところ、削らなきゃいけないかも。
あれ、しょっぱいぞ。海水が口に入ったかな?
その海水の源は、純真無垢な青年の悲しみに満ちた瞳でした。
ボク、ここで死ぬのかな。
とりあえず、フェリーの時間(15:10)だけは守ろう。それだけ心に決め、予定していた電動スクーターを借りに、瀬戸内 レンタサイクル「カレン」さんへと向かいます。そこで今後のスケジュールの相談にものっていただきました。
「今日この後、直島にも行こうと思ってるんですけど…」
「それはタイトスケジュールですねー! ってことは、15時55分のフェリーに乗るのね?」
……!?
……15時55分!?!?
(調べた中にはそんな時間無かったぞ!?)
それもそのはず。次の直島には、港が二つあります。当初予定していたのは本村港。しかし、宮浦港という港に向かう船に変更すれば、予定より45分も長く島に滞在できます。
予期せぬハプニングに救われ、豊島でも行きたいと思っていた場所へは全て行くことができました。
あと、豊島を回るなら自転車より断然電動スクーター。金銭面を考えてケチると、エライ目にあいます。
美術館やオブジェまでの道が、かなりぐねぐねしていて坂も多いので、国際免許証を持ってない海外の人たちは自転車で汗ダラダラ流しながら頑張ってました。
夏は特に。ここちよい島風を感じられる電動スクーターを「カレン」さんでぜひ。
◇心臓音のアーカイブ
電動スクーターでおよそ10分。
ここは世界で唯一、いつでも心臓音を記録できる施設です。
クリスチャン・ボルタンスキーも「人間は二度死ぬ」という言葉を残していますが、人が本当に死ぬのは、肉体が滅んだときではなく、人に忘れ去られたときだと思います。
人が生きている「証」である心臓の鼓動を録音し音源化することで、ボクが死んでも、生きた証を後世に残すことができます。
たったの1500円ほどでこの世に生きた証を残せるなんて、なんてリーズナボー!
名前を検索すれば、登録済みの他の人の心臓音も聴くことができます。(有名人でいうと、北野武さんや松任谷由実さんなどの鼓動も聞けます。)
港からは少し遠いですが、豊島を訪れる際は必ず行くべき場所です。何度も言う。電動スクーター、有能。
美術館といったら、いろんな作品が展示してあって、それを見て回るのが一般的だけど、この美術館は少々特殊です。
まず、作品が一つしかない。
しかも、作品はなんと、大きな建物です。
とても不思議な空間に最初は戸惑いますが、だんだんのめりこんでいきます。というより雰囲気にのまれていきます。
地べたに座ってのんびりしている人や、寝転がっている人などがいて、さまざまな楽しみ方ができる美術館でした。
変わった美術館を体感してみたい方はぜひ。人によっては何時間でもいられると思います。レンタサイクルで相談にのってもらったおじさんも、「1時間はとったほうがいい」と言っていました。ボクは時間の都合で5~6分ほどしかいられませんでした。みじか。落ち着きのない5才のガキかよ。
生と死が同時に感じられる作品が展示してあり、思わずギョッとするような作品に出会えます。こちらは港からも近いので訪れやすいです。
◇イル・ヴェント
豊島横尾館のすぐ近くにあります。
島の日常と大きくかけ離れた内部のデザインに 圧倒されます。
◇豊島、出港。
短い時間でしたが、豊島の魅力を十分すぎるほど実感できました。
他にも豊島にはさまざまな屋外作品やオブジェ、美術館があります。
島をぐるっと一周することで、豊島のアートをほぼ網羅できるルートも教えていただけたので、次回来るときはもっと豊島を好きになれそうです。
瀬戸内レンタサイクル「カレン」さん、ほんとうにお世話になりました。
次に来るときも、よろしくお願いします!
そしていよいよ最後の島、直島へ。
続く